フィリピン・セブ島で約10年間滞在し、病院での勤務や日常生活を通じて、日本とは大きく異なる文化や環境に直面してきました。楽園のようなイメージを持たれがちなフィリピンですが、実際に長期滞在してみると、安全・健康面での注意点や人間関係での留意点など、知っておくべき重要なポイントが数多くあります。
これから旅行や留学、移住を考えている方々に向けて、私自身の経験から得た教訓を共有したいと思います。スリに2度遭った実体験を含め、この情報が皆さんのフィリピン生活をより安全で快適なものにする一助となれば幸いです。
1. 水には細心の注意を払うこと
フィリピンで最も気をつけるべきことの一つが「水」です。実際、私がセブ島の病院で働いていた時、日本人患者の最も多い症状は下痢でした。入院するケースも下痢が圧倒的に多かったのです。
なぜフィリピンの水は危険なのか
セブの川を見れば一目瞭然です。川にはあらゆるゴミが捨てられ、ホームレスの方々のトイレにもなっています。また、水道管が古く非常に不衛生で、勝手に分岐して使用している人もおり、そこから衛生状態がさらに悪化しているケースもあります。
実際に、東ダバオ州カラガでは汚水が原因で集団下痢症が発生し、400人以上が症状を訴え、死者も出た事例がありました。
具体的な対策
- 水道水は絶対に口にしない
- 歯磨きもミネラルウォーターを使用する
- 小さな子供はシャワーの水でなく、ミネラルウォーターで体を洗う(1歳頃まで)
- モール等でフルーツジュースを買う時は、氷なしを注文する
- ミネラルウォーターは安物を買わない(水道水が混ぜられている可能性がある)
- 日本食レストランでも刺身は要注意(調理・管理しているのはフィリピン人がほとんど)
2. 屋台・食べ物には要注意!下痢・食中毒のリスク
セブ島の屋台グルメは安くておいしく、旅行者にも人気ですが、衛生面での注意を怠ると腹痛・下痢・食中毒に見舞われます。10年間の滞在で何度も目にしてきたリスクをまとめます。
屋台・ローカル食堂で気をつけること
路上の屋台や安いローカル食堂では、食材の保存環境が整っていないことが多く、特に暑い日中に長時間外に出されている肉や魚は危険です。見た目がきれいでも、傷んでいる場合があります。また、調理器具や皿が十分に洗浄されていないケースも珍しくありません。
- 屋台の揚げ物・串焼き(バーベキュー)は、火がしっかり通っているものを選ぶ
- 長時間常温で放置されている食品は避ける
- 生ものや半生の魚介類(刺身・セビーチェ等)はリスクが高い
- 食器が清潔かどうか確認する習慣をつける
- 手洗いとアルコール消毒を徹底する
氷・ジュース・アイスクリームにも注意
路上で売られているカラーフルなアイスや、屋台のジュースに入っている氷は、水道水から作られている可能性があります。モールや清潔なカフェ以外では、氷なし(”No ice, please”)を徹底しましょう。
下痢になってしまったら
もし下痢や腹痛の症状が出た場合、軽度なら市販の整腸剤(ビオフェルミン等)で対処できることもありますが、38度以上の発熱・血便・激しい腹痛が伴う場合は速やかに病院へ向かってください。私が勤務していた病院でも、こじらせて入院するケースが後を絶ちませんでした。
- 整腸剤(ビオフェルミン、正露丸など)は日本から持参するのがベスト
- 経口補水液(ORS)で脱水を防ぐ
- 自己判断で下痢止めを飲みすぎない(毒素が体内に残る恐れがある)
- 症状が2〜3日以上続く場合は必ず受診する
3. スリ・ひったくりに要注意——私が2度スリに遭った実体験
セブ島での窃盗犯罪の中で最も多いのがスリ・ひったくりです。観光客はもちろん、長期滞在者でも被害に遭います。私自身、10年のセブ生活で2度スリに遭いました。
実体験①:シヌログ祭りのオスメニアサークルで
セブ最大のお祭り「シヌログ(Sinulog)」は毎年1月に開催され、街全体が熱狂に包まれます。特にFuente Osmeña(オスメニアサークル)付近は満員電車状態になるほどの人混みです。私もその雰囲気に引き込まれて祭りを楽しんでいたのですが、気がつくとポケットのスマートフォンがなくなっていました。
周りは肩が触れ合うほどの人混みで、いつ盗られたかまったく気づきませんでした。これがプロのスリです。シヌログ期間中は毎年スリ被害が多発しており、ニュースでも取り上げられるほどです。
実体験②:ジプニー車内で「時間を聞かれた」隙に
もう1度も同じくオスメニアサークル付近でのことです。ジプニーで移動中、隣に座ったフィリピン人から不自然なタイミングで時間を聞かれました。「時計を確認しよう」と腕時計に目をやった、ほんの数秒の隙に、カバンの中のスマートフォンが消えていたのです。
後から振り返ると、時間を聞いてきた人物と仲間が連携していたのだと確信しています。ジプニーの混雑を利用して、意識を別の方向へ向けさせる典型的な手口でした。カバンは膝の上に置いていたにもかかわらず、です。
ひったくりの手口にも注意
スリより激しい「ひったくり」も頻繁に発生します。特にバイクや自転車に乗った2人組が、歩道を歩く人のバッグや携帯を走りながら奪っていく手口が一般的です。コロン(Colon)通り周辺や繁華街では特に注意が必要です。
- バッグは体の前側にかけ、ファスナーを閉める
- スマートフォンを外で使う際は、周囲に注意を払う
- 道路側にバッグを持ち歩かない(バイクひったくり対策)
- 貴重品はできるだけ分散して持つ(財布、スマホ、パスポートを同じ場所に入れない)
スリ・ひったくり対策まとめ
- お祭りや人混みでは特に警戒を怠らない(シヌログ・クリスマスシーズンは特に危険)
- 知らない人が不自然に話しかけてきたら即座に警戒する
- 貴重品は目立たないインナーポーチや腹巻型ポーチに入れる
- ジプニー・バス車内では荷物を体の前に抱える
- 12月のクリスマス前後は泥棒が激増するため、特に繁華街では気を引き締める
なお、フィリピンでは12月(クリスマス前)にも犯罪が急増します。クリスマスはフィリピン最大のイベントで、それに向けてお金を用意しようとする人が増えるからです。シヌログのある1月とクリスマスシーズンの12月は、特に気をつけてください。
4. フィリピン情報の間違いに注意
多くの人がブログで気軽に情報を発信していますが、間違った情報や偏った情報が散乱していることも事実です。
よくある情報の問題点
- 数ヶ月の留学や滞在でフィリピンのすべてを語っている
- 一度の経験(例:デング熱に一回かかっただけ)で全てを分かったように書いている
- 語学学校関係者のブログが、広告料を多く払っている順番にランキングを作成している
- 宣伝やコミッションをもらっている店舗を絶賛している
私自身、10年以上住みましたが未だにわからないことだらけです。特に学校や会社の冠をつけているブログの情報には、偏りがあることがあるので注意が必要です。
情報収集のポイント
- 複数の情報源を比較する
- 長期滞在者の意見を重視する
- 商業的な利益関係がないか確認する
- 自分で実際に確認することを怠らない
5. フィリピン人の「知ったかぶり」に注意
フィリピン人の多くは見栄っ張りで、いいかっこうしい。知らないことでも知ったかぶる傾向があります。これが時に大きな問題を引き起こします。
病院での実例
セブドクターズ・ホスピタルで、患者さんが点滴交換の際に「気をつけてやってね」と親切に指示したにもかかわらず、新人ナースは「大丈夫」と自分のやり方で交換し、案の定気泡が入ってしまいました。
日本なら新人は「先輩に確認します」「ドクターに確認します」と対処しますが、フィリピン人は新人で何も知らないのが恥ずかしいので、ベテランのように振る舞うのです。知識もなく、勉強もしないから、あてずっぽうの対応で(ほとんどが間違い)クレームが来るのです。
職場での問題
同僚スタッフがある調査案件に対して、何の相談・報告もなしにやってしまい、しかも間違った答えを回答したケースもありました。「なぜ報告なしで回答したのか」と質問すると、「自分でジャッジした」との回答。責任も取れないスタッフが、すべてを把握していないのに、なぜジャッジするのか。新人スタッフの前でいいかっこうをしたかったのでしょう。
対策
- 重要なことは必ず複数回確認する
- 専門的なことは上司やベテランに確認させる
- 「大丈夫」という言葉を鵜呑みにしない
- 結果を必ず自分の目で確認する
6. フィリピン人スタッフとの接し方
多くのフィリピン人は、オーナーや社長には従順です(植民地の名残だと言われています)。しかし、上司に対してはケースバイケースです。
甘く見られると起こること
日本人上司がいつも優しく接したり、気さくに接したりすると、フィリピン人部下からは甘く見られて、指示通り動かなくなる傾向があります。甘く見られると、残業はしないし有給は取りまくる、勤務中でもおしゃべり中心となりオペレーションが回らなくなるのです。
かといって厳しすぎても問題
フィリピン人の上司は部下に対してかなりきついし、富裕層の人たちはハウスキーパーたちにいつも命令口調できつくオーダーしています。しかし、しょっちゅう叱ったり注意すれば萎縮してしまい(彼らは怒られ慣れていないため)、すぐに休んだり転職したりします。
理想的な接し方
一番良い方法は、そこそこ権限を持ちつつ、仕事だけでなく人間的にリスペクトされることです。しかし、それがなかなか難しいので、フィリピンで働く日本人が困っているのです。
7. タクシーのぼったくりや配車トラブルに注意
フィリピンでは移動手段としてタクシーや配車アプリ(Grabなど)を利用する人が多いですが、日本とは違いトラブルも少なくありません。
まず注意したいのが、タクシーのぼったくりや遠回りです。メーターを使わずに高額な料金を請求されたり、わざと遠回りして料金を上げようとする運転手もいます。
そのため、フィリピンでは配車アプリ(Grabなど)を利用する人も多いのですが、アプリを使った場合でも問題が起きることがあります。
私の経験では、アプリで車を呼んだにもかかわらず、運転手が途中で別の客を拾ってしまい、なかなか迎えに来ないというケースが何度もありました。マップ上では車が近くにいるのに、なかなか動かないこともあります。
また、交通渋滞や運転手の都合で突然キャンセルされることもあり、急いでいる時には非常に困ります。
フィリピンでタクシーを利用する際は、以下の点に注意するとトラブルを減らすことができます。
- できるだけ配車アプリ(Grabなど)を利用する
- 乗車前に目的地を伝える
- メーターが動いているか確認する
- 深夜や人気のない場所では利用を控える
フィリピンでは日本のように安心してタクシーに乗れるとは限りません。移動の際は常に警戒心を持つことが大切です。
7. 自分の身は自分で守る——日常生活10の心得
フィリピンでは、自分を守れるのは自分だけです。日本にいる時のように気楽にしていれば、大変なことになるかもしれません。
日常生活での注意点
- 交通安全:信号が青でも右折者等を確認して渡る(自動車保険に入っていない人が多く、ひき逃げに遭います)
- 雨の日:水たまりを注意して歩く(車に泥水をかけられます)
- 食事:日本食レストランで刺身を食べる時は要注意。屋台では必ず火の通った食べ物を選ぶ
- 買い物:屋台等で果物を買う時は、売り手まかせにしない(古い商品ばかり入れられます)
- 賞味期限:スーパー等で食品を買う際は、必ず賞味期限をチェックする(期限切れ商品も紛れ込んでいることがあります)
- Wi-Fi:Wi-Fiを買えば、必ずパスワードを変更する(さもないと、たくさんのフィリピン人が勝手に使い、回線速度が遅くなります)
- スマホの扱い:人混みや公共交通機関の中でスマホを取り出さない。使う時は壁を背にして周囲を確認する
- タクシー・配車アプリ:タクシーの運転手にまかせっきりにしない(遠回りをされることが多い)。GrabなどのアプリはルートがGPSで記録されるので安全
- 夜遊び:バー等で知り合ったフィリピーナにはプライベートな話はしない
- 女性の注意:韓国人達と飲みに行く場合は、決して深酒をしない。眠り薬の混入をチェックする(2012年にマクタン島で事件が発生)
まとめ
フィリピンは魅力的な国ですが、日本の常識が通用しない場面が多々あります。10年間の滞在を通じて学んだことは、「フィリピン人まかせにしないで、何に対しても必ず自分で確認する」ということです。
水の問題、屋台・食べ物の衛生リスク、スリ・ひったくりの手口、情報の真偽、知ったかぶり、人間関係の難しさ、そして日常生活での様々な注意点——。これらを理解し、適切に対処することで、フィリピンでの生活はより安全で快適なものになります。
特にスリについては、「自分は大丈夫」という油断が一番の敵です。私自身、10年住んでいても2度被害に遭いました。どれだけ慣れていても、お祭りの熱気や公共交通機関の混雑の中では気を抜かないようにしてください。
この記事が、これからフィリピンに渡航される方、すでに滞在されている方にとって、少しでもお役に立てば幸いです。気をつけて、楽しいフィリピン生活をお過ごしください。


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