フィリピン入国審査の実態を10年の滞在経験から語る
私はフィリピンに10年以上滞在し、セブ島の病院で働きながら、数え切れないほどフィリピンと日本を往復してきました。その中で実際に見たり、聞いたりしたフィリピンの入国審査やブラックリストの実態について、今回は詳しくお伝えします。
フィリピンは観光地としても人気ですが、入国審査で思わぬトラブルに遭遇する日本人も少なくありません。事前に知っておくべき情報をまとめましたので、フィリピン渡航を予定されている方はぜひ参考にしてください。
フィリピンで入国拒否されるケースとは
フィリピンの入国審査は、アメリカなどに比べると比較的緩いと言われています。しかし、それでも毎月数百人が入国拒否されているのが現実です。セブ島(マクタン空港)の入管職員から直接聞いた話によると、入国拒否される国籍は中国、インド、韓国の順に多いとのことでした。
入国拒否される主な理由
1. 帰りの航空券(復路チケット)を所持していない
これは最も多い入国拒否の理由の一つです。フィリピンは観光ビザで入国する場合、必ず帰国便または第三国への出国便の航空券を所持している必要があります。片道航空券だけでは入国できません。
2. パスポートの残存期間が6か月未満
フィリピン入国時にパスポートの有効期間が滞在日数プラス6か月以上必要です。これを満たしていない場合、入国を拒否されることがあります。出発前に必ずパスポートの有効期限を確認しましょう。
3. ビザの不備
日本人は30日以内の滞在であればビザ不要ですが、それ以上滞在する場合は適切なビザが必要です。ビザの種類や期限に不備があると入国できません。
4. ブラックリストに登録されている
過去にフィリピンで問題を起こした人や、オーバーステイをした人、前科がある人などがブラックリストに登録されており、入国を拒否されます。
ブラックリストに入れられる行為
ブラックリストに既に登録されていなくても、入国審査時の態度や行動によって、その場でブラックリストに登録されることがあります。特に注意すべき行為をご紹介します。
入管職員への態度に要注意
入管職員に悪態をつく、大声を出す
これは絶対にやってはいけません。フィリピンには「公務員侮辱罪」という法律があり、公務員に対して侮辱的な態度を取ると罪に問われる可能性があります。入国審査官も公務員ですので、たとえ理不尽に感じることがあっても、冷静に礼儀正しく対応することが重要です。
感情的になって怒鳴ったり、暴言を吐いたりすると、その場でブラックリストに登録され、今後フィリピンに入国できなくなる可能性があります。
不審な行動や虚偽の申告
入国目的について虚偽の申告をしたり、質問に対して曖昧な回答を繰り返したりすると、不法就労や不法滞在を疑われてブラックリストに登録されることがあります。
ブラックリストの解除方法
一度ブラックリストに登録されてしまうと、フィリピンへの入国は非常に困難になります。正式な解除方法は、フィリピンの弁護士に依頼して「ブラックリスト解除(リフティング)」の手続きを行うことです。この費用は20万円から30万円以上かかると言われています。
名前を変更するという裏技
私が聞いた話では、ブラックリストを回避するために、日本のパスポートの名前を変更してしまった方がいたそうです。
日本では、正当な理由があれば家庭裁判所の許可を得て氏名を変更することが可能です。結婚や離婚による姓の変更、通称名の使用実績による変更など、いくつかの方法があります。名前が変われば新しいパスポートが発行されるため、理論上は過去のブラックリスト記録とは紐づかない可能性があります。
ただし、これはあくまで聞いた話であり、推奨される方法ではありません。フィリピン入国管理局のデータベースがどこまで精密かによって結果は異なるでしょう。
フィリピン入管のいい加減さ
フィリピンの入国管理は、正直なところかなりいい加減な部分があります。同じ規則でも、担当者によって対応が違ったり、日によって審査の厳しさが変わったりします。
私の体験談:永住ビザ更新忘れでも入出国できた
私自身、フィリピンの永住ビザを持っていましたが、更新手続きを忘れていた時期がありました。本来であれば入国時に問題になるはずですが、何度か入出国を繰り返しても特に指摘されることはありませんでした。
これはラッキーだったと言えますが、逆に言えば、フィリピンの入管システムがいかに曖昧で一貫性がないかを示す例でもあります。同じ状況でも、担当者が変われば厳しく対応される可能性もあるのです。
運と担当者次第の面も
ブラックリストに載っている人でも、たまたまチェックが甘い担当者に当たれば入国できてしまうこともあると聞きます。逆に、何も問題がない人でも、担当者の気分次第で別室に連れて行かれ、長時間の尋問を受けることもあります。
この「いい加減さ」は、フィリピンという国の特徴でもあり、良くも悪くも予測不可能な部分があります。
アメリカの入国審査との比較・アメリカで強制送還されかけた体験談
参考までに、アメリカの入国審査についても触れておきます。私は10年以上前にサンフランシスコの空港で別室に連れて行かれた経験があります。
当時、留学のために渡米したのですが、I-20(入学許可証)というフォームを家に置き忘れてしまったのです。結局、後日郵送することを条件に入国は許可されましたが、別室では他の外国人が次々と入国拒否され、本国に強制送還されていました。私も「入国拒否されるとどうなる?」と考えました・・・
アメリカの入国審査は非常に厳しく、一度ブラックリストに載ると解除は極めて困難です。それに比べると、フィリピンは「お金で解決できる」側面があり、ある意味では柔軟とも言えます。
フィリピン入国で気をつけるべきポイントまとめ
フィリピンへの入国をスムーズにするために、以下のポイントを必ず確認しましょう。
- 帰りの航空券(復路または第三国行き)を必ず用意する
- パスポートの残存期間が6か月以上あることを確認する
- 入管職員には常に礼儀正しく対応する(公務員侮辱罪に注意)
- 感情的にならず、冷静に質問に答える
- 虚偽の申告は絶対にしない
- 過去にトラブルがある場合は、事前に弁護士に相談する
まとめ
フィリピンの入国審査は、アメリカなどに比べると緩い面もありますが、油断は禁物です。特に入管職員への態度には細心の注意を払い、必要な書類はすべて揃えて入国に臨みましょう。
万が一ブラックリストに登録されてしまった場合は、弁護士を通じて正式な解除手続きを行うのが最善の方法です。フィリピンの入管は担当者や日によって対応が異なるという「いい加減さ」もありますが、それに頼るのではなく、きちんと準備をして入国することが重要です。
フィリピンは素晴らしい国ですが、入国審査でつまずかないよう、この記事の情報を参考にしていただければ幸いです。
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